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Arte Classica by Ishiguro Gallery

井上馨の「もらっておく」

幕末、明治維新。
激動の時代を見事に勝ち抜き、
有史に名を刻んだ人物の一人、井上馨。
第一次伊藤内閣で初代外務大臣に就任する他、官要職を歴任。
一方で三井物産創設、日本郵船誕生に関与する等、
政官財界に絶大なる存在感を示した。
西郷隆盛、大久保利通、伊藤博文ら、維新の名士たちが次々と志半ばで世を去る中、
79歳まで生き延び、侯爵にまで上りつめている。

歴史の教科書にも登場するこの方だが、実は熱心な美術コレクターでもあった事、
ご存じであろうか?
聞くところによると、茶会に招かれた先で気に入った茶碗や掛物を一方的に「もらっておく」
と言っては強奪したらしい。
持ち主は権力者である井上に逆らえず、泣き寝入りするしかなかったと言う。

ここに面白いエピソードがある。
この話を聞いた明治天皇が井上の茶会に行幸し、「もらっておく」と言い出して井上を狼狽させ、横暴をたしなめたらしい(笑)。
井上のコレクションは明治期に成立した中では最大規模の個人コレクションであった。
大正14年に行われた井上侯爵家御所蔵品入札には『御所丸茶碗 銘夕陽(現 藤田美術館)』等、
現在各美術館の顔になっている優品が多数出品され、高額落札が目白押しの売立になった。
そのコレクションに含まれていた、見事な「トトヤの平」の話が次回の話😝。

 

(I)

 

抹茶茶碗 Arte Classica アルテクラシカ抹茶茶碗 Arte Classica アルテクラシカ

楽しみな映画

 

短い夏を、ミンミンという蝉の大合唱やギラギラの太陽から体中で感じる頃。

 

こうも厳しい暑さが続くと、室内で楽しめることを探してしまいますね。
そんな時に、涼しい室内で快適に過ごせる娯楽の一つに映画があります。

 

もうすぐ公開の「アートのお値段」。
今、世界のアート市場はかつてないほどのバブルという。
現代アートは、どのように価値付けされるのか、アートとお金の関係を探るドキュメンタリー映画で、現代アート市場の裏側も興味があるので、大変気になります。
時々、ニュースで耳にする「現存アーティスト、落札額最高を更新」など、作品よりも落札額が大きく取り上げられたりしますが、古美術の場合も、同じように金額のインパクトが強くて、お客様によってはモノがどうかというのは二の次になる場合があります。

 

名品優品といわれる古美術品は、ある程度先人たちが、これはいいモノ、と価値付けしたものがあるので、それらが基準となるのでしょうが、現代アートの場合はどうなのだろうか。知りたいところです。

 

アートのお値段」は、もうすぐ公開です。

 

富と芸術。
パトロンの存在が、文化を活性化させていた時代に想いを馳せながら、江戸時代の茶碗のご機嫌を伺っています。

 

 

(A)

美のものさし

 

こんにちは!
アルテクラシカ半年目、新人のMです。
まだまだお店のことも、古美術のことも初心者なのですが、
今日は内側から見たアルテクラシカのお話から。

 

アルテクラシカの1日は掃除から始まります。
そんなこと当たり前ですが、当たり前にあらず、のお掃除なんです。
最初に教わったときには毎日こんなに丁寧に?と少し驚きました。
でも、1時間くらいかけて店をピカピカに磨き上げ、水を打った店内の清々しさで開店すると嬉しくて自然に背筋も伸びます。

 

アルテクラシカに来てから、美しさ、ということをよく考えるようになりました。
人でも、物でも、最初から美しいものがあります。
でも、美しさということは、実は育っていくものなのではないか、と思うようになりました。
どんなものでも、ほっておけばどんどん寂れていきますよね。
でも、手をかけて目をかけていくと、美しさは育つんです。
そして、美というものを見る目も、どんどん育っていきます。

 

年をとって、しわくちゃの顔が本当に美しいと思うお年寄りに出会うことがあります。
これは、単に見た目の美醜ではなく、その方の考えや生き様が姿形に出るのでしょう。
清めて水を打った場所は、たとえ古い土間でも清らかな美が宿ります。

 

 

最近読んだ本にスティーブ・ジョブズと、ペプシコーラの社長だったジョン・スカリーの逸話が書かれていました。
スカリーはコカコーラに後塵を拝していたペプシで、マイケルジャクソンをCMに起用するなどしたマーケティングの天才です。
ブラインドテスト風にペプシを飲むテレビCMを覚えていらしゃる方も多いのでは?
ジョブズはスカリーをアップルの社長に引き抜きたいと考えるのですが、当時はペプシに比べればアップルは小さな会社。
仕事の話はせず、ひたすら二人でメトロポリタンなどの美術館巡りをしたのだそうです。
これはお互いが相手の「美観」を通して人格を深く見極めようとして、とのこと。。
価値観を確かめ合うということだったのかもしれません。
最後にジョブズがスカリーに言った決めセリフは有名です。
Do you want to sell sugared water for the rest of your life, or do you want to come with me and change the world?

 

 

日本の戦国武将たちが明日をもしれぬ日々の中で茶事に惹かれ、また茶道具の収集にも情熱を燃やしたことは、戦いの中でどんな意味を持ったのでしょうか。
美、という物差しを以って人を深く見ようとする試みが、ここにもあったのだろうと思いを馳せました。

 

 

あなたが美しい、と思うものは何ですか?
お聞きしたいです😊

 

 

今日もアルテクラシカでお待ちしています。

 

(M)

 

抹茶茶碗 Arte Classica アルテクラシカ

魚屋のボン

魚屋のボン。
と言っても「さかなやの坊っちゃん」の話ではない。

魚屋と書いてトトヤと読み、斗々屋とも書く、茶碗の話。
トトヤには本手と平があるが、今日は平の話。

 

夏の平茶碗の中で、よほど流行ったのか、比較的数が多いが、
良いのか悪いのか分からないものも含めて(笑)、
沢山あるわりに、魅力の乏しい物が多い。

 

トトヤのボンとは「トトヤのボンクラ」の略で、
魅力に欠けるトトヤ茶碗を個人的にそう呼んでいる。
ボンクラとは盆暗と書き、元々は賭博用語らしいが、
転じて、ぼんやりしていてぱっとしない様を言う。
私の親愛なる師匠が魅力のない物に好んでお使いになっていた言葉で、
私も受け売りで使っている。

 

以前に蕎麦茶碗について書いたが、蕎麦がレアなのに対して数が多いのは、
あくまで推測だが、蕎麦タイプの人気が高まり、
その需要にトトヤがはまったのではないだろうか。

 

ところで、トトヤの平は数はあるのに、なぜか有名品が少ない。
ぱっと思い浮かぶのは、かの有名な「広島」くらいだろうか。
改めて調べてみると、やはり少ない。
そうなると、これはいよいよトトヤの平で魅力的と言うと
貴重だと言う事になってくる。

 

何と言っても広島が断トツだが、藤田家旧蔵の一碗もなかなかの逸品だ。
要は、トトヤの平の出来が良いのに出会ったら決して逃すな、と言う話である。
平茶碗だから、とか言ってる場合ではない。

 

(I)

 

抹茶茶碗 Arte Classica アルテクラシカ

「遊び」に一生懸命

 

梅雨のあいだ待ち遠しかった太陽の光、ようやく蝉の声もエンジンがかかり大合唱ですね。夏休み中の子供たちが駆ける姿を微笑ましくも、暑いなか元気だなーと思う日々。

 

 

先日、サントリー美術館で開催されている「遊びの流儀 遊楽図の系譜」を観てきました。「遊び」を暮らしとともに辿るというなんとも興味深い展示。
それぞれの時代の絵画に共通するのは、どんちゃんと歌って踊って食べて飲んで宴を楽しみ、全身でひとときの喜びを味わっていること。そして、人々がそれを分かち合い笑い合い、連なっているのが印象的でした。また、描かれている顔の表情が生き生きと活気に満ち溢れていて、まるで屏風に広がる「遊び」の輪に鑑賞する側も参加しているかのようなワクワク感。現代に置きかえると、どんなシチュエーションかな〜などと考えながら比較して観るのも、面白いものです。

 

 

猛暑のなか、暑さと仲良く遊べる方法を模索しつつ、平茶碗で一服。
抹茶茶碗で先人と共に遊んでみませんか?

 

A

 

 

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Arte Classica | アルテクラシカ。江戸時代及び現代作家の抹茶茶碗を扱う店。

アルテクラシカは、古美術商石黒ギャラリーが根津美術館の向かい側にオープンした、江戸時代(古美術)及び、現代作家の抹茶茶碗を扱うお店です。併せて、現代の生活空間で抹茶を楽しむための、新しいスタイルの茶器・茶筅・柄杓等の取り扱いもしております