next
Arte Classica by Ishiguro Gallery

時代を超えた感覚

 

ぎゅっと詰まった夏の思い出を引き出しに収めて、待ち遠しかった秋を想うころとなりました。

 

 

先日、ある若手陶芸家が対談する番組を観ていました。
その作家は、陶芸の枠を超える造形とカラフルでポップな色彩を表現する釉薬で、世界中から注目される陶芸家。なぜ今の作風が生まれたのか、作品や素材についてなど色々とお話を伺ううち、番組を通して、なるほど、と腑に落ちるところがありました。

 

 

ビジュアル的に斬新で今までにないものを作ろうと強く意識されているのかなと思いきや、作品は自然な流れで生まれたとのことでした。
「現代は、西洋式の椅子に座り洋服を着る生活スタイルへと変化し、自ずと人の手から生み出される色や形が変わって当たり前のもの。伝統的な感覚は、追究するべきだけれど、人間が本能的に感じる何かを現代なりに表現したい。」と。

 

 

そんな言葉を聞いて、やはり美術品はその時代時代の空気感を表すものなんだなと改めて思いました。
よくお客様に、「桃山のやきものが未だに作り手や使い手を魅了するのは、現代にはない、その当時の生と死が背中合わせの緊張感や何かが動く変革期ならではの強力なエネルギーが凝縮されているからではないか。また、当時の陶工が見ていた風景や自然物に囲まれた生活と、コンクリートなど人工物に囲まれた現代人とでは、やきものに対する捉え方が異なり、同じ人間の手から生み出される色や形は自ずと異なってくるものでは。」などとお話しをすることがあります。

 

 

まさに、現代の作り手が同じようなことをおっしゃっていたので、大きく頷いてしまいました。

 

 

アルテクラシカに並ぶ茶碗たちは、どんな景色を見ていたのでしょう。

(23日秋分の日は、祝日なので営業しております。)

 

A

玄鳥去

 

急に朝晩秋らしくなりましたね。

 

前回書きましたが、なかなかに気忙しかった1週間でした。

 

そんな時って、ちょっとしたことがとっても心に沁みます。

 

まだ残暑の茶席で一客一亭。
お月見団子を盛るような高坏の上に、火箸で兎の顔をつけた薯蕷饅頭がこちらを向いて一つ。

 

普段可愛らしいものにあまり興味がないのですが、思わず微笑んでしまいました☺️

 

アルテクラシカのAが京都で芳玉糖を買ってきました。
噛むとシュワっと夏の思い出のような菓子。
ようやく秋が✨
一碗のお茶に、癒されました。

 

この秋の展覧会に少し呼応してアルテクラシカでも茶碗を並べます。
名碗が各展覧会で勢ぞろいするこの秋、アルテクラシカの茶椀も本当に美碗揃いです!

 

アルテクラシカで気持ちを込めて皆様をお待ちしています。
美術展巡りの最後にぜひお立ち寄りください。

(祝日の際は月曜日も営業しています!)

 

M

抹茶茶碗 Arte Classica アルテクラシカ

 

躍動する美濃に想う

 

日本の歴史のなかで、桃山時代は三大変革期の一つといわれるくらい、様々な伝統的な価値観やシステムが一気に崩壊し、同時に新たな世界観や制度が急速に構築されていった時代。そんな昨日の常識が今日は非常識というくらいに日々刻々と変化する激動の波を表すように、文化面ではダイナミックでエネルギッシュな美が求められ、海を渡ってきたものにはない日本独自の美意識が開花したといわれています。

 

美術品というのは、作られた当時の時代の風を強く反映するものなのだなと改めて辿れる展覧会「黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部 – 美濃の茶陶」展が、サントリー美術館で開催されています。

桃山の歴史的背景を感じつつ、およそ40年ほどの短い期間に駆け抜けた足跡をやきものを通して観ることができる、やきもの好きにはたまらない内容となっております。

 

茶碗だけでいうと、志野茶碗 銘卯花墻(三井記念美術館)や鼠志野茶碗 銘峯紅葉(五島美術館)、同じく鼠志野茶碗 銘山の端(根津美術館)などなどスター級を同時に比較して観ることができ、その佇まいに見惚れてため息ばかり。どこから見ても美しい造形力、その当時だからこそ表現できる力強さの中にある洗練された華を感じます。

 

展覧会は、11月10日(日)まで。
展示替えもあるようなので、何度も足を運んで、桃山の風を体感してこようと思います。

A

抹茶茶碗 Arte Classica アルテクラシカ

 

月見る月はこの月の月

 

こんにちは。

 

お久しぶりです。
アルテクラシカも夏休みを頂戴していました。

 

皆さまはどんな休暇を過ごされたでしょうか。

 

今週は関東に台風が通過しました。
私事ですが、両親が千葉の南端におり、連絡が取れなくなりました。
高齢のため心配をし、台風の翌日の火曜日に思い切って車で様子を見に行きました。
千葉県は想像以上の被害で、アクアラインを渡り終わった瞬間に携帯は圏外になり、通話はもちろんメールやネットもすべて不通に。
グーグルマップのナビゲーションも使えず、全く情報が取れません。
普段気軽に使っている便利な情報がないと、こんなにも不安になるものかと思いました。

 

両親の近所は特に被害が大きく、屋根のない家、壁すらないお宅も何軒もありました。

幸い親は元気でしたが、今でも大変な時間を多くの方が過ごされていることを思うと胸が痛みます。
せめて1日も早い電力の復旧を願います。

 

今夜は中秋の名月。

 

今日の東京は厚い雲に覆われて、満月を地上から見ることは叶わないようですが、
猛暑が続いた地には一息つける晩になりそうですね。

 

見えない月を思い浮かべて。。
平穏な一日に感謝しながらお茶を一服いただきます。

 

今日もアルテクラシカで皆様のお越しをお待ちしております。

 

M

蝉の小川

 

9月に入り、いよいよ蝉の鳴き声も千秋楽ですね。
去り行く夏を惜しみつつ、蝉にまつわる平茶碗話をちょいと。

 

石川や 瀬見の小川の清ければ 月も流れを尋ねてぞ澄む <新古今・神祇>

 

石川の瀬見の小川は水の流れが清いので、月もこの流れを尋ねてきて、澄んだ輝きで川面に宿っている、と言う意味。
この歌は「方丈記」の著者鴨長明が歌合わせの席で詠んだもので、長明が「瀬見の小川」を詠んで以来多くの人が「瀬見の小川」を歌に詠むようになった、歌人としての出世歌らしい。
この歌をきっかけに、『京都賀茂川に入る泉川が下鴨神社境内の糺森(ただすのもり)を通過する部分』が、「瀬見の小川」と呼ばれるようになったらしい。
更に発展、「瀬見」の字を「蝉」の字に置き換えて「蝉の小川」となり、この銘を受けた平茶碗が、世上時折、散見される。

 

大正14年に行われた、井上侯爵家御所蔵品入札に出品された中にも、「蝉の小川」なる斗々屋平茶碗が見られる。
この平トトヤ、名碗の約束事である、「見事な高台」は勿論、加えて以下の2つの特徴的な見所がある。

 

1つ目は、見込みの堪らなく綺麗な釉溜まり。
その景色は正に「蝉の小川」の銘に相応しい。
数は有れどもボンクラの多いトトヤの平にあって、高台に加えて見込みにも見所があり、出色の出来だ。
2つ目は、過剰なまでの愛情たっぷりの次第だ。
整え主が井上馨かどうかは判然としないが、整え主の溢れんばかりの愛情が存分に感じられる。
敷き詰められた座布団に乗り、生類憐れみの令のお犬様か!(笑)

 

これ程までに整った次第を見ていると、「茶碗は中身だ!」と日々言い続けているが、次第だけでふらふらっと惹かれるちゃう気持ち、分からなくもない。

(I)

 

抹茶茶碗 Arte Classica アルテクラシカ

Arte Classica | アルテクラシカ。江戸時代及び現代作家の抹茶茶碗を扱う店。

アルテクラシカは、古美術商石黒ギャラリーが根津美術館の向かい側にオープンした、江戸時代(古美術)及び、現代作家の抹茶茶碗を扱うお店です。併せて、現代の生活空間で抹茶を楽しむための、新しいスタイルの茶器・茶筅・柄杓等の取り扱いもしております